JSP と ファンネル・ダクト
VS CHR70
小口径スピーカーユニットで豊かな低音が再生するスピーカシステムと言えば、ダブルバスレフやバックローデッドホーンなどのエンクロージャが思いつくが、それぞれ長所、短所があって、好みが分かれるところである。
最近話題になっているJSPスピーカーとファンネル・ダクトスピーカーは基本的にはバスレフのエンクロージャであり、ネットで読む限り豊かな低音を再生するとのこと。
JSPスピーカーは、FOSTEXのFF85KやALTECのCF404-8Aで良い低音を再生することを確認済みだが、ファンネル・ダクトスピーカーも4.5リットル程度の小容積の箱から結構豊かな低音が出てくる。
この異なるタイプの箱に同じユニットをマウントして聞き比べをしてみることに。使ったユニットはタングバンドの8cmフルレンジW3−1335SB(チタンコーン)。ファンネル・ダクトスピーカーは、メーカーが魔法のスピーカーと称して8cmの平面スピーカ(W3-1797S)をマウントして商品化しているが、低音の再生においてはさほど違わない。ブックシェルフ型の小さな箱に取り付けたW3−1335SBは、低音から高音域までスムーズでなかなか良い音を再生する。やや締まった低音で、低音不足といったことはない。チタンコーンのユニットの優秀さが光るバランスの良い癖の無い音で好感がもてる。4.5リットル程度の容積だが、内部に取り付けたファンネル(漏斗)の容積などを差し引くと正味2〜3リットル程度か。大型システムのようなゆとりのある低音ではないが、小口径ユニットで効率的に低音を絞り出している印象である。全体にやや硬質な音場でエネルギッシュなサウンドである。
JSPスピーカーはどうか。この箱はファンネル・ダクトスピーカのサイズよりやや大きく、奥行きも深い。正面から見ると、サイコロのような形である。外観はファンネル・ダクトスピーカーの方がスッキリして収まりも良い。
さて再生音であるが、ファンネル・ダクトバスレフスピーカーに比べて、低音が豊かでファンネルより重心が低くなる。箱の容積が大きいゆえ、ゆったりと音が出るのは予想したとおりである。どちらもも好みが分かれると思うが、やや締まった低音のファンネル・ダクトスピーカーに対してゆとりのある低音がJSPという印象である。単独で使用するには、ファンネルにはサブウーハーを少し足したい。
ところでJSPスピーカーだが、試しにユニットの取り付け位置を違う場所にずらすと、低音の量がやや少なくなり、音の張り出しも弱くなったような感じがする。極普通のバスレフの音である。やはりサイコロの中心にユニットを取り付けないと、JSPの特徴が出ないようだ。
ファンネル・ダクトバスレフを考案した業者はタングバンド製の平面スピーカー「W3-1797S」をマウントしている。このユニットを試したくてオーディオパーツ店「オーディオ
レイク サイド」に注文すると、最近このユニットが値上がりして、1本7000円前後になったとのこと。
安価なユニットながら本格的な音を出す10cmフルレンジのCHR70(Mark audio社製)
店主の萩原さん曰く、「あまり評判が立たないのが不思議なのですが、Mark Audioのユニット
CHR-70は非常に優秀で、これが4500円以下で買えます。穏やかでしっとりとした、それでいて独特の艶を持った音質
に感じます。低音の伸び方は、3インチのユニットから無理矢理引き出す低音と違って、圧倒的に余裕を感じますね」とのこと。初めて聞く製品名だが、萩原さんの提案を信じて早速そのCHR70を注文、使っていない11リットルのバスレフエンクロージャに取り付けて視聴。
CDはお気に入りのキャサリン ジェンキンス。視聴・・・、視聴・・・。「まぁ、なんと、ゆったりと且つ綺麗に鳴るではないか・・・・。」JSPもファンネルも霞んできた。R氏から借りた貴重なプラチナコードをスピーカーターミナルの手前に繋いでみると更に良くなって感動ものである。
以来、他のスピーカーを差し置いて、毎日のようにこのスピーカーを聴いている。
マークオーディオ社には同じ口径の上級製品(Alapir7)が売られている。その廉価版といえるCHR70の2倍強の価格だが、どんな音を再生するのか、こちらも興味津々である。
右の 写真は、聞き比べを行ったスピーカー。両端は、CHR70をマウントしたバスレフ。真ん中の茶色の箱と内側の白い箱は、TangBandのW3-1335SBをマウントしたファンネル・ダクトバスレフ。
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