北アルプス

  槍 ヶ 岳

              (標高3180m)



        平成24年9月25日(火)


槍ヶ岳は、北アルプス南部に位置する標高3,180mの山で日本で5番目に高い山である。名前の如く天に槍を衝く形が特徴的で、日本アルプスのシンボル的存在である。日本100名山の著者の深田久弥氏は「いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう」と書いている。かつて自動車メーカーのCMの中に「いつかはクラウン」というフレーズがあったが、山で例えるならば「いつかは槍へ」。槍ヶ岳は山を愛する者にとって正にステータスであり、一度はその頂に立つのが憧れであろう。

槍ヶ岳への主な登山ルートは、東鎌尾根(表銀座ルート)、西鎌尾根(裏銀座ルート)、槍平・飛騨沢ルートなどがある。今回は、槍ヶ岳までなだらかな登りが続き、登山初心者でも難なく登頂することが可能な槍沢ルートを辿ることにした。


上高地から横尾へ

梓川沿いを歩く

徳沢園

登山口の上高地から横尾まで梓川に沿ってほぼ平らなハイキング道が歩く。樹林帯の中の単調な地道が続くが途中にある徳沢園で休憩をとり、その後も梓川沿いをひたすら歩く。
上高地から約3時間で横尾に着く。横尾は槍ヶ岳と奥穂高との分岐点にあり、立派な山荘が建っている。10年ほど前の奥穂高岳登山に利用した施設である。夕食のあとに翌日の弁当を注文したが、その弁当はおにぎり等ではなくパンが3〜4個入った洒落た弁当だったことを印象に残っている。


横尾山荘

横尾大橋

穂高と槍の分岐

山荘の前のベンチで昼食をとり、休憩をとったあと槍ヶ岳への登山道へ入る。
ここから槍ヶ岳までは11km、今日の宿泊予定地はその途中に建っている槍沢ロッジである。横尾から槍ヶ岳登山道に入ると登山者の数が急に少なくなったような気がする。涸沢・穂高岳の方に登る人の方が多いようだ。蝶ヶ岳への登山道を右手に見送り、更に沢沿いの登山道を進む。しばらく平坦な登山道を進み、沢に架かる小さな橋を渡ると一ノ俣、続いて二ノ俣から吊橋を渡る。徐々に登りになる。石の階段を登りつめると前方右手に槍沢ロッジが見えてくる。この山荘も大きな建物だ。


吊橋を渡ると一ノ俣

沢沿いの登山道

槍沢ロッジに到着

時計を見るとまだ午後2時過ぎ、山頂直下に建つ槍ヶ岳山荘まではまだけっこう距離があるので、今日はここで宿泊とする。
宿泊の受付けを済ませ、無料サービスのコーヒーを頂く。有難い。この時期はお盆と紅葉の季節の合間で空いているようだ。
小屋の中は綺麗で快適、風呂に入れるのがまた有難い。


ロッジの玄関

ロッジのロビー

寝床は二段ベッド

翌朝、早々に朝食を済ませ、出発の準備をする。この日の天気は雲がやや多めだが、後に晴れてくるそうだ。ロッジ前から見えるという槍の穂先は雲で見えない。予報どおり雲が取れ青空が広がることを願って出発する。ロッジから右手に曲がるように登山道を登る。適度な登りで程なくババ平キャンプ場に着く。水も豊富にあり、いい場所である。道標に山頂まで5kmと記されている。ここからゆるく下り槍沢を詰めて行く。9月末にもかかわらず、まだ沢に雪渓が残っている。前方にアルプス独特の山肌が見えてきた。沢伝いに緩やかな登山道が稜線の方に伸びている。快適な登山ルートである。


ババ平キャンプ場

槍沢を詰める

登山道を振り返る

登るにつれ、雄大な景色が広がってきた。幸い上空のガスも徐々に晴れだし青空も見え出した。ババ平から小1時間で大曲。水俣乗越へ登る分岐を右に見送り槍沢を進む。
高山植物が咲く時期はとっくに過ぎ、登山道周辺には可憐な花々はほとんど見られないが、色あせたアザミの花だけがまだ残っていた。天狗原分岐で休憩をとり、傾斜がさらに増してきた登山道を登る。目指す槍ヶ岳の穂先は未だ姿を見せてくれない。


槍沢の風景

花期の終えたアザミの花

一足先に紅葉したナナカマド
   

紅葉の時期はまだ少し先だが、一足先にナナカマドが色付き始め、槍ヶ岳から穂高岳に通じる稜線の岩壁とのコントラストが素晴らしい。
森林限界を過ぎると、ハイマツが生えるゴロゴロとした岩の登山道になる。
稜線が徐々に近づき、その手前に小さく殺生小屋が見える。あいにく稜線に建つ槍ヶ岳山荘や槍の穂先はガスで覆われている。時々写真やビデオを撮りながら厳しい登りを一歩一歩詰めて行く。


ハイマツ帯のガラ場

槍の穂先はガスの中

振り返ると常念岳が

稜線の方にビデオカメラを向けていると、俄かにガスが流れ出し、槍ヶ岳山荘がくっきりと見え出した。続いて山荘右手(北側)一帯を覆っていた厚いガスも瞬く間に払われ、突如として槍の穂先が目の前に現した。直ぐ目の前に初めて姿を見せた槍ヶ岳、劇的な登場に暫くただ見惚れてしまった。ほぼ垂直にそそり立つ大きな岩の壁、そして名のとおり天を突く山容に圧倒される。


俄かにガスが流れ出した
ようやく姿を見せた槍ヶ岳

頭上に穂先を望む

殺生ヒュッテへの分岐辺りで、登山道周辺はハイマツ帯から草紅葉のガラ場に変わる。ここから山頂まで1km、一旦緩くなった登りが再び急登になり稜線まで続く。槍の肩に建つ槍ヶ岳山荘は徐々に近付いてきたのだが、さすがに息が上がり牛歩のような歩みになる。
西岳、大天井ヶ岳への分岐で最後の休憩を取る。振り返ると端正な山容の常念岳が同じような高さで聳えている。


槍ヶ岳山荘

大槍と小槍

山荘への最後の登り

槍ヶ岳山荘がようやく目の前に近づいて来た。大きな山荘で、そのすぐ左側に槍ヶ岳の穂先が鋭く天に突き刺すがごとく立ち上がっている。見上げると何人もの登山者がその絶壁に張り付いている。山頂に立つ登山者も見える。
槍沢ロッジから約4時間で、ようやく槍ヶ岳山荘にたどり着いた。

空はすっかり晴れ渡り、最高の登山日和になった。展望の良いテラスにザックを下ろし、辿ってきたルートを眺める。一緒に登ってきた仲間は随分遅れてまだ殺生ヒュッテ分岐を過ぎた所をゆっくりと登っている。


山荘前のテラス

テラスから望む槍の穂先

岩壁に取り付く登山者

のんびりとお茶を飲みながらテラスから槍の穂先に取り付く登山者の様子やルートを眺める。切り立った岩壁に垂直に取り付けられた梯子、とりわけ山頂直下の2段の長い梯子に目がいく。暫くすると上高地方向から荷揚げ用のヘリコプターが飛んできた。登山者が割りと少ない時期だが、けっこうな量の荷物を運び上げている。テラスで20〜30分ほど休憩してから、空身で槍の穂先に登ることにする。下から見上げると垂直で危険な岩壁を登るように見えるが、実際に登り出すと思ったより登り易い。、要所には鎖や梯子が設置されて高度感や恐怖感はそれほど感じられない。ルートも判りやすくけっこう楽しい登りである。山荘から山頂までは100mの標高差。約30分ほどのアルバイトである。
登りルートと下りルートは別になっていて、しかもルートにはペンキで印も付けられスムーズに登れる。最後の長い垂直の梯子はさすがに緊張して手に力が入るが、これを登り切ると、標高3180mの北アルプスのシンボル、槍ヶ岳山頂に到着。


穂先へのルート

山頂直下の梯子

最後の梯子を登る

これまでこの山頂を遠くの山から眺めるだけであったが、ようやくその憧れの山頂に立つことができた。山頂は20〜30人ほどのスペースがあり、奥に小さな祠が祭られている。遠くから見る槍の穂先の印象より広い山頂である。さっそく祠の前に進み記念写真におさまる。幸い山頂には3〜4人が休憩しているだけで静かである。展望は申し分なく穂高岳、常念岳、笠ヶ岳、薬師岳など名高い山々が見渡せる。後から登ってこられた登山者も、祠の前で順番に槍ヶ岳と記された木製のプレートを掲げて記念写真を撮っている。北海道から来られたという年配のご夫婦が休憩されていた。聞くとこの山頂で1時間以上、ただのんびりと展望を楽しんでいるという。


槍ヶ岳山頂

眼下に見える槍ヶ岳山荘

薬師岳方向を望む

後から遅れて登ってきた仲間も無事山頂に到着。時間もたっぷりとあり、山頂で2時間近く展望を楽しみ、下山にかかる。

下り専用の梯子を慎重に下り、再び山荘のテラスに腰を下ろす。登ってきたルートを顧み、岩場に取り付いている人、下りてくる人を見上げる。何度見ても飽きない光景である。

槍沢ロッジまで下れる時間があるが、明朝の御来光が期待できるのでこの山荘に宿泊する。ここも比較的空いていて快適だ。



日の出前の山荘テラス


常念岳左手から陽が登る

山頂肩から望む前穂高岳

夜が明けると予想どおり好天気だ。御来光は常念岳から大天井ヶ岳方向に寄った稜線から上がってきた。今日はほぼ快晴で昨日ガスがかかって見えなかった山が綺麗に見渡せる。
素晴らしい展望をしっかり目に焼き付けて、下山にかかる。来たルートを引き返すが、上高地には遅くとも午後4時間でには着きたい。
下山途中、何度も槍の穂先を振り返りながら下る。山荘から横尾まで一気に下り、徳沢で昼食。やはり横尾から上高地までの平凡な道10kmが長く疲れた。

好天に恵まれた槍ヶ岳登山。体力が続けばもう一度登りたい山である。そのときはテントを担いでのんびりと登りたい。


早朝の槍ヶ岳山荘

槍ヶ岳もここで見納め


コース 上高地→徳沢→横尾→槍沢ロッジ(泊)→槍ヶ岳山荘→槍ヶ岳→槍ヶ岳山荘(泊)→横尾→上高地


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