秋の大台ヶ原


 (東大台ハイキングコースを歩く)



             平成20年10月18日(土) 快晴



  大台ヶ原は奈良県と三重県の県境に連なる台高山脈の南端にある標高1600mの高原状の山域で、最高峰は1695mの日出ヶ岳(ひでがたけ)。年間5千ミリを越す雨が降るため山上一帯は深い原生林や苔の森が広がる。
 深田久弥の日本100名山の一つに挙げられ、全国でも名が知れた山である。今回は、紅葉が真っ盛りの東大台を散策することにした。

  大台ヶ原の山頂一帯は、一般に東大台と西大台に分かれる。西大台は深い原生林の森に覆われ、植生保護のため昨年(平成19年9月)から入山規制が行われている山域、対し東大台は、トウヒの立ち枯れが特異な風景をつくる正木ヶ原や一面笹原の牛石ヶ原、岸壁に張り出した大蛇ー(だいじゃぐら)などダイナミックな風景が展開する人気の山域である。


          
大台ヶ原駐車場                                                  東大台周遊道
  

  大台ヶ原の紅葉の季節となり、混雑を避けるため早朝に自宅を出発。午前7時前に大台ヶ原駐車場に到着。絶好の天気に恵まれ先ず大台ヶ原最高峰の日出ヶ岳を目指す。ビジターセンターの横にハイキングコースの入口があり、整備された散策道を進む。まだ時間が早いためかハイカーは少なめだったが、日出ヶ岳と正木嶺の稜線の鞍部に造られた展望台から尾鷲湾方向を眺めていると、徐々に賑やかになってきた。


      
大台ヶ原最高峰の日出ヶ岳山頂          朝霧がかかる正木嶺         山頂からの展望(正面は三津河落山)


  ここから木の階段が山頂まで続いていて、登り切ると三角点が埋まる日出ヶ岳山頂である。視界をさえぎるもののない360度の大パノラマで、展望台からは、南東方向眼下に尾鷲湾、西方向に大峰山脈が望め、北方向には北部台高山脈の山並みが続く。
  案内板には、東から北東方向に遥か南アルプスや御岳、富士山なども望めると記されているが、あいにくこの日はそれらの山々は見ることができなかった。


      
日出ヶ岳から正木嶺へ            正木嶺から正木ヶ原へ            森の荒廃が進む正木ヶ原

展望を充分堪能した後先ほどに鞍部まで戻り、正木嶺へ続く木製の階段を登る。正木嶺はトウヒの南限地だが、一帯はトウヒの立ち枯れが進み、イトザサの群生と白骨化した倒木のコントラストが大台ヶ原の代表的な風景をつくっている。立ち枯れしているトウヒが全て倒れると、普通の笹原の山になってしまうのが残念である。


          
正木嶺の木道を下る                       正木嶺から正木ヶ原へ


  正木嶺から一旦下り、登り返すと正木ヶ原である。数年前まではたくさんの鹿がすぐ傍で見られたが、最近は駆除が進んだのか、ほとんど見かけなくなった。整備された木製の階段から開放されて、ハイキング道を尾鷲辻まで下り、牛石ヶ原へ進む。
  紅葉した木々の中の散策道から笹原に覆われた広い平原にかわると牛石ヶ原である。牛石ヶ原は、イトザサの平原に魔物を封じ込めたと伝えられる牛石があり、右手には大きな神武天皇の像が立っている。大台ヶ原の山頂に、このような広い平地が広がっているのが不思議であり、奈良公園などを散策しているような錯覚を覚える。


       
尾鷲辻から牛石ヶ原へ向かう                                イトザサの平原「牛石ヶ原」

  牛石ヶ原から少し進むと分岐があり、大蛇まで300mの道標が立っている。平坦な道から岩がゴロゴロとした下り道に変り、右手に千石の絶壁が見えてくる。岸壁に突き出た岩の稜線を歩いているようで、程なく前方が切れ落ちた大きな岩の上に立つ。
  岩の最先端には鉄の杭と鎖が張られているが、高所恐怖症の人にはとてもそこまで行けないようだ。下を眺めると蛇の頭のような岩が絶壁から突き出ていて、その下は約
1000mほど落ち込んだ絶壁となっている。前方には大峰山脈が連なり、右手の千石の向こうには日本の滝百選に選ばれている「中の滝」が落ちている。右手の千石の絶壁には、3人の登山者が垂直な壁に取り付いている。随分と苦労している様子がうかがえる。


      
千石ーの紅葉                大蛇の登山者


          
大蛇からの眺め                         牛石ヶ原とシオカラ谷の分岐(東大台コースの中間点)


  大蛇は大台ヶ原の一番の人気スポットゆえ岩の上は満員、飽和状態で、後から次々と人がやって来る。長居はできないため早々に元の分岐まで戻り、周遊コースをシオカラ谷へ下る。石楠花の群生地の中の下り坂で、花期の5月中旬には見事な花を見ることができる所である。


  
シオカラ谷の渓谷 (このすぐ下流で「東の滝」になって東ノ川に合流)


  分岐からシオカラ谷へのコースは、正木ヶ原や牛石ヶ原のコースに比べ登山者がぐっと少なくなる。2キロの長い下り坂が続くが、沢の音が聞こえてくると程なくシオカラ谷に下りる。辺りの渓谷は実に清々しく、川原ではグループや家族連れが休憩している。この地域も山頂一帯に含まれるが、山上に豊富な水が流れているのは驚きである。

 沢に架かる吊橋を渡り、急な階段を登って出発点の駐車場へ向かう。シオカラ谷から大台ヶ原駐車場の間は、西大台に似た深い森(写真:右)が残され、野鳥などの観察
に適した地域である。

  大台山荘を右手に見過ごすと程なく駐車場に戻る。約9kmの周遊コースで、ゆっくり歩いても3時間30分ほどで一周できる。
  東大台ハイキングコースは、日出ヶ岳から正木嶺、正木ヶ原、牛石ヶ原、大蛇、シオカラ谷と続く変化に富んでいて、美しい紅葉を纏うこの時期は最高の大台ヶ原に接することができる。

  大台ヶ原の紅葉から、約1ヶ月をかけて紅葉前線は里まで下りてくる。京都や奈良などの観光地が紅葉に染まる11月の20日過ぎには大台ヶ原ドライブウェイが閉鎖され、登山者の立ち入りを拒む冬の休眠期間に入る。



行 程 (休憩時間除く)

 大台ヶ原駐車場⇒<40分>⇒日出ヶ岳⇒<18分>⇒正木嶺⇒<13分>⇒正木ヶ原⇒<25分>⇒牛石ヶ原⇒<18分>⇒大蛇⇒<50分>⇒シオカラ谷⇒<30分>⇒大台ヶ原駐車場



表紙に戻る


ブログパーツUL5

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送