新緑の西大台

          平成18年5月21日(日) 快晴

  大台ヶ原は本州で最も雨水量の多い地域の一つで、トウヒやブナなどの自然林が多く残されているが、昭和34年の伊勢湾台風後、東大台でトウヒの立ち枯れなど森林の衰退が目立つようになった。東大台の正木ヶ原は最も広範囲な立ち枯れ地で、今の大台ヶ原の代表的な風景になってしまった。しかし、昔は鬱蒼とした森が広がっていたのである。
  西大台は幸いまだ自然を保っているが、最近、植生保護と自然再生を図るため、荒れつつある西大台の山域に入山者などを規制する「利用調整地区」を指定する動きが進んでいる。西大台は大台ケ原ドライブウェイの南側一帯に広がる原生林で、観光客の多い東大台に比べて、訪れる人が少ない。私は、ダイナミックで変化がある東大台もよく歩くが、静かな三津河落山や中の滝・西の滝を正面から望む滝見尾根、そしてこの西大台の静寂を保つ原生林が大好きである。しかしながら、近年、三津河落山も滝見尾根も入山禁止になり、更にこの西大台が利用調整地区として指定されれば、広大な西大台の原生林の中を自由に歩くことが出来なくなってしまう。そんな入山規制の動きを気にしながら、新緑の西大台を歩くことにした。

行 程

         大台ヶ原駐車場 ⇒大台教会 ⇒展望台・開拓分岐⇒ナゴヤ谷の河原⇒ 七つ池  ⇒  開 拓  ⇒
              (午前9時5分)       (9:09)             (9:18)           (9:27)          (10:18)     11:16)                   


                 … <昼 食> …⇒   駐車場・小処温泉分岐 ⇒ 展   望   台 ⇒    駐 車 場
                      (11:35〜12:00)                  (12:04)              (12:23〜12:50)      (14:43着)

西大台 (ドライブウェイから)
  大台ヶ原の駐車場は直ぐに満車になる。朝9時に着いた時はもう既に満車で道路脇に車が並んでいる。車を路肩に置き、駐車場入口から大台教会への道を下る。観光客の殆どが東大台に向かう。多分、西大台そのものを知らないのだと思う。大台教会を過ぎ、展望台・開拓地への分岐を直進すると林を抜け明るいナゴヤ谷の河原に下る。大台の開拓者・松浦武四郎の墓への分岐がある。沢を渡り、沢を左に見ながら少し登りと山腹を捲く水平道になる。しばらく進むと右側の頭上にドライブウェイ見え、車の通る音がする。やがて登山道はここから西に向かい、再び静まりかえった原生林の中に入る。
大台ヶ原駐車場
駐車場から大台教会へ下る
大台教会から七ツ池へ下る
  七ツ池までは緩やかな起伏が続くが、コースの左側には鹿よけのネットが張られている。西大台には何箇所かの地域にネットが張られ、植生保護と再生の実験が行われている。それにしてもこの西大台は多くの観光客でごった返しているであろう東大台と全く対照的な地域で、見渡す限り新緑の原生林。人も余り見かけず、聞こえるのは沢の音と野鳥のさえずりだけである。貸切の別天地である。行けども行けども同じ風景が続き、写真を何枚も撮るが同じ風景の写真になる。
  七ツ池で休憩を取り、苔むした石や倒木地を過ぎ、沢を幾つか渡り、広々した開拓地跡に着く。綺麗な沢と深い新緑の森が迎えてくれる。。
 ナゴヤ谷の川原に下る
 (近くの高台に松浦武四郎の分骨碑がある)
七ツ池でひと休み 
← どこまでも原生林が続く
足元にはバイケイソウが見られる
  開拓と呼ばれているこの高野谷一帯は、明治時代に開拓が試みられ、そば、ひえ、麦などが植えられた。しかし多くが満足に収穫されず、今は100年の歳月で元の原生林に戻っている。広い平坦な地形でその中を綺麗な水が流れている。また、バイケイソウが一面に生えて、あと1ヶ月ほどすれば白い花を一斉に咲かせることだろう。ここはまさに別天地である。沢の傍で昼食タイムにする。10人位のグループが歩いている。見るとみんな手に白いビニール袋と火バサミを持っている。ゴミを集めるボランティアの方たちのようで西大台一帯のゴミを集めてくれている。開拓から展望台は3〜40分の距離。沢を渡り分岐から小処温泉の方へ緩く登ると左手に大蛇ぐらや千石ぐらが見え出す。展望台には2人の登山者がいるだけで静かである。
バイケイソウの群生
まさに別天地といった開拓地跡
  展望台からは、正面に大蛇ぐら、その右奥に堂倉山が見え、大蛇ぐらの左側には千石ぐらが望める。展望台の右奥に回り込むと、高さ200メートル以上の西の滝が東の川に落ちているのが見える。このところ雨がよく降るため滝の水量も多く、実に見応えがある。展望台を辞し、少し戻った所に1本の巨木が立っている。ミズナラの樹のようだが、根がコブのように盛り上がり、その部分だけを見ると巨大なカボチャのようだ。この樹はこれまでも何度か見ているのだが、いつも初めて見たように驚き、感心してしまう。今日も駐車場が早々に満車になるほど多くの観光客がこの大台に来ているのだが、西大台で出会った人は、ボランティアの方たちを除いたらわずか10名程度だった。西大台はこれでいいのである。新緑の西大台は最高に綺麗だ。この新緑が色付く秋に、また紅葉を見に訪れたい。
帰路は2つの吊橋と、中の滝、西の滝へ流れる沢を渡って駐車場に戻る
展望台の正面に大蛇ぐらが見える
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